【神戸新聞】津波対策うちの標高は? 芦屋市などマップ作製

兵庫県芦屋市などのハザードマップ・防災マップに関するニュースです。


神戸新聞|社会|津波対策うちの標高は? 芦屋市などマップ作製

 東日本大震災後、東南海・南海地震の津波被害に備え、「標高マップ」を作製する関西の自治体が増えている。地点や区域の標高を表示するだけで、津波高や浸水域など被害予測を示す数値が一切ないのが特徴だ。震災では従来の「想定」にもとづくハザードマップなどが安心材料になり被害を拡大させた可能性が指摘されており、想定にとらわれず客観的な情報を重視する傾向の表れとして専門家も注目している。
(小川 晶)
 芦屋市は昨年9月、A2判の「標高マップ」を作り、全戸配布した。市域の大まかな標高を色分けして示すとともに、市消防高浜分署4・6メートル▽芦屋浜交番6・1メートル▽阪急芦屋川駅28・1メートル‐など、41カ所の具体的な数値を明らかにした。
 昨年10月、東日本大震災を受けて兵庫県が公表した暫定の浸水予測では、最大5メートルの津波が同市に到来するとされる。浸水被害は市域の数%にとどまる見込みだが同市防災安全課の大上勉課長は「東日本大震災では、行政の安心情報が裏目に出た。想定は大切だが、市民が臨機応変に判断できる情報を提供したい」と説明する。
 今年1月に沿岸部の津波浸水予測図を公表した徳島県。震災後、「住まいの高さが知りたい」という問い合わせが相次ぎ、補正予算案に測量経費を盛り込む方針を決めた。
 同県南海地震防災課は「想定にもとづく防災対策とともに、想定にとらわれない対策も必要と判断した」。今後、市町村と協力し駐車場や神社など、住民に身近な地点の標高を測るという。
 内閣府が今春予定する、3連動地震を踏まえた新たな被害想定の公表までの一時的な措置とする自治体も。和歌山市は昨年12月、市域を標高に応じて6区分に色分けしたマップを作製した。同市総合防災課は「新たな想定にもとづくハザードマップに標高を加えるかどうかは未定」とする。
 一方、兵庫県内では標高マップに懐疑的な自治体もある。
 市域の約3分の1がゼロメートル地帯という尼崎市は「平らな地形が広がっており、標高マップを作っても効果が薄い」と説明。
 神戸市は「避難情報として誤解を与える可能性がある」と否定的だ。同市危機管理室は「津波警報などの津波高と標高は算定基準が違うので単純比較はできない」と話す。